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インターナショナルスクールの思い出ブログ〜微笑みの爆弾〜

恥ずかしい記憶は消えない。

学生時代、トイレの鍵が開かなくなって困っていたらクラスメイトの1人が「幽霊いる!中から気配がする!」と騒いで、トイレ前に人だかりが出来て出るに出られなくなったあの時の記憶は消えない。

営業部に配属された新人時代、慣れない仕事にやる気だけは見せようと会議で発言をした瞬間、あ、違った、頓珍漢なことを言ったんだと気づかせた、お局の意地悪とそれ故の愉快という気持ちをないまぜにして煮詰めたようなあの笑顔が脳裏から消えない。

恥をかくたびに、もう極力何もせずにただ生きていこうと強く思うのに、人間なのでたびたび恥をかく。

子供がインターナショナルスクールに通っている。

文京区立にじいろ幼稚園に通っていた私には、異質そのものの空間である。

そもそも英語。外国人という存在。私からしたら遠すぎる。

私の父はバリバリの江戸っ子なので、もはや“外国人”ではない。“げーこくじん”が江戸になんの用でい。

あちらさんからしたら、「願書を出したのはそちらです」。そうでしたっけ?私が入りたいって言いました?鎖国してない?ほんと?あ、こりゃまた失礼いたしました。

インターナショナルスクールはイベントが多い。

幼稚園・保育園にもイベントはもちろんあるが、正月・ひな祭り・夏祭り・運動会・餅つき。そしてまた正月が来る。全部知っている。全てどんなイベントか言われなくても分かっている。ひな祭りに着物はまず着ないだろうが、夏祭りでは浴衣を用意する必要がありそうだという推測もできる。餅つきは親が駆り出されそうだなという心構えもできる。

インターナショナルスクール(長い。以下インターとする)はどうだろう。

そもそも正月がない。正月を祝え。正月こそ至高。でも無い。ホリデーシーズン。ホリデーシーズンって何。いつからいつまで。

そしてValentine day・St. Patrick’s Day・Easter・Thanksgivingと続く。

…何言ってんの?何?

横文字のイベントは、想定がつかない。ディズニーランドのイメージしかない。セントパトリックデイとサンクスギビングはまだディズニーも取り入れていないはずだから、私の中にも存在しない。私の中での最新オシャレイベントはイースター(卵とうさぎのグッズが出回る日)までで更新が止まっている。

でも私のせいで子供が恥をかいたら可哀想なので、放置もできない。

有り難いことに基本的にPTAという概念が存在しないインターでは親の協力が求められることは無い。いや正確に言えば「課金」というシステムでおおよそ解決させられる訳だけど、クラスのみんながセントパトリックデイを祝う日に我が子だけトンチキな格好をしているという事態は起こらないのだけは救い。

でも我が子が楽しそうに訳のわからないものを祝っているという不思議さはある。セントパトリックデイ…?

そして最大のイベントがクリスマスである。

クリスマスは分かる。大丈夫。さしもの私も、クリスマスについては把握している。クリスマスについて説明しろと言われると馬小屋で?なんか?爆誕?みたいになるけど。

加えてクリスマスあたりにお遊戯会を設定するインターはおそらく多い。

クリスマス会のために歌や踊りを用意して、かわいい衣装を着て子供が披露する。涙なしには見られない最高のイベント。

無事に終わり、プレゼント交換をする。

インターがモンテッソーリ園だったこともあり、その年は、プレゼントは既成のおもちゃは駄目で、フルーツ持参という指定があった。おそらく前年度に揉めたんだろう。

金額の指定もあった。たしか2000〜3000円だった。

私は最寄りのスーパーで最も高い箱入りのシャインマスカットを買った。箱に入っている果実は美味い。知っている。値段もそれを証明している。ヨーカドーのおじさんが、カウンターで慣れない手付きで包装してくれた。

私の手には、箱入りのシャインマスカットがある。とても強い。大貧民なら「2」。Fortniteなら「金タクショ」だし、幽遊白書なら「邪王炎殺黒龍波」。

素敵なメロディーと共に、各家庭から用意されたフルーツが回る。

ありえない。

そんなことはありえない。

回っているのは、フルーツバスケットであった。

フルーツ・バスケット。

その名の通りバスケットに様々なフルーツが盛り付けられた、素敵極まりない見栄えのする物体。

産まれてこのかた30余年あまり、フルーツバスケットを初めて見た。

クラスのレクリエーションか、漫画喫茶でしか見たことがなかった。

これが本物のフルーツバスケット。フルバ。

バナナがある、りんごがある、それだけならまだしもマンゴーがある。それが一つのバスケットに収まっている。なんなら花も刺さっている。そしてきらめくリボンで飾られている。

私は「2」を持っていたはずなのに、他の人はジョーカーを4枚切ってきた。Forniteならロケットランチャー2丁持ちだし、幽遊白書なら仙水(しのぶの人格)登場。

信じられない。

信じることが、できない。

さっきまできらめいていたシャインマスカットの輝きが失われている。単独では流石に俺も無理ですという佇まいである。どうしたんだよ!マンゴーが怖いのかお前!!輝いているのは名前だけ。それももはや虚しく響くのみ。

地元のおじさんがたどたどしく包んでくれた包装も、なんだかクラスのみんなが新しいワンピースを見せ合っているのに、自分だけがおばあちゃんの手作り服を着ていて、恥ずかしいし脱ぎたいけれど、でもおばあちゃんには言えない。愛がこもっているし傷つけたくないから。みたいな気持ちになる。私は包装紙を握りしめる。ワンピースの裾を握るような感じで。

メロディーが止まり、誰かはシャインマスカットを受け取り、私は立派なフルーツバスケットを手に入れて、誰とも目を合わせないようにして足早に帰宅した。

私は悪くない。

私は悪くない。

2000〜3000円って言ったじゃん。

単独で3000円するであろうマンゴーが入ったフルーツバスケットをぶち込む、そっちが悪いよ。

私は悪くない。

おばあちゃんも悪くない。

相手がどんな気持ちで今夜シャインマスカットを食べるのか考えたくもない。マンゴーは美味しかった。

恥をかいた記憶は、消えない。

インターの思い出、インターってどんなところと聞かれたら、普通英語力の伸びやカリキュラム体制などを答えるべきだと、分かってはいる。

でも私には、ここが魔境であると伝える使命がある。

覚悟したほうがいい。

魔界の空気が肌に合うもののみが、生きられるのである。

やつらはS級妖怪だ。

瘴気を食って、生きている。

これが原因ではないですけど別のインターに転園しました。
インターすべてがこうではないです。

おしまい。